音と遊んでた頃の事と、サカナクション。
30代後半である私が10代だった頃、音楽にドップリだった。
聴く音楽がファッションになり、生活スタイル…いや憧れの生き方になり、
あらゆる音楽が、生きる原動力だった。
街に行けば音楽とファッションが溢れてた。そんな青春だった。
でも、いつしか時が経ち2000年を過ぎた頃から徐々に音楽から付かず離れず
それがいい距離感だったのかもしれないが、”のめりこむ”ということは
ほとんどなくなっていった。
10代の頃、まだ当然ながら学生でライヴに足を運ぶようになってから、
《一枚のアルバムを買うか、ライヴに一回行くか》
という選択肢で(アルバイトを制限されてた関係もあって)、動いていた。
やっと買ったアルバムは、何ヶ月も聴いていられた。
興味があるアーティストが有れば友達と、MDで音源を交換し合ったり。
音楽情報を仕入れに行くのは、雑誌かラジオ、口コミも。
今みたいにYouTubeもインターネットもなかった。
ライヴの情報を仕入れるのも会場で配られるフライヤー、
ライヴハウスの冊子か雑誌で今思うと不自由ではあるけど、
それは今にはないドキドキ感(いや、ハラハラかも)を与えてくれる貴重な体験だったかもしれない。
ついでに書けば、まだ東京都では条例がなく未成年でもオールナイトのクラブイベントや、ライヴイベントへ足を運ぶこともできた(不良だったかもw)。
17歳だった自分はこの頃、ロックもテクノもありとあらゆる音を浴びて、
のびのびと育っていたのかもしれない。
そんな音の中で10代を過ごして、今、巷に溢れる音楽を聴いても…
自ずと思っている人は分かるだろうけど心を引っ張ってくれる音楽は見つからなくなっていた、いつの間にか。
自分が掘ってないのかもしれないと思って、色々CDをレンタルしてみたりしたが
ライヴの会場まで足を運びたいと思うアーティストは殆どと言っていいほどいなかった。インディーズシーンまで掘り下げれば別かもしれないが、そこは自分の怠慢かもしれないし、わがままだとは思う。
音楽にドップリでなくたった30代初頭は、細々ながらCLUBに通い、仲間を作り
小さなコミュニティーの中でDJまでさせてもらったこともあったが、
あまりに”色々な事情と思惑”が渦巻くあのシーンの中で、窮屈になり逃げ出してしまった。
それからまた何年か経った。
そんな今、おくらばせながらサカナクションを良く聴くようになった。
聴いてるうちに10代の頃のあのドキドキ感みたいなものを取り戻した気がする。
まず、フロントメンバーである山口一郎氏の発信する音楽の考え方が、自分とぴったり一致していたこと、年齢もほとんど一緒であるために共感できたのかもしれない。
そしてかなり共感できた理由を挙げると、
”きっと、生まれ育った時代背景も関係していると思います。僕が生まれたのは、「探す遊び」の時代です。1980年生まれなんですが、当時はインターネットがまだ今みたいに普及していなかった。情報を手に入れるのにも苦労しました。雑誌を見て情報を得ることが多かったですね。
CDを1枚探すのも大変でした。3000円のアルバムをジャケ買いしたらハズレだった……といったようなこともよくありました。
そうやって手に入れたものを、もったいないから繰り返し聴く。難しいものにこそ何かあるはずだという期待感があったんですね。そうすると、そのうちに不思議と良さがわかってくる。そんな自分に対して高揚感が湧くんですよ(笑)。
僕は「探す遊び」を続けてきたから今の自分があると思っています。いまの20代を見ていると、「探す遊び」の方法を知らず、「浴びる遊び」をしている人が多いように見えます。ちょっと残念ですね。 ”
このインタビューの一節だった。
サカナクションの音楽がロックだけでなく、クラブミュージックが土台にあったり決して1ジャンルで片付けられない音楽性、歌詞の感性…言葉で表せない何か。
90年代にくるりやナンバーガールを初めて聴いたときになにか通じうるものが、
自分の中はあった。
山口一郎氏は未成年でも保護者同伴なら入場できたりする健全な野外クラブ・ミュージックイベント
(俗に言う、過去のRAVE)を主催したりしていることも知り、そんな試みも応援したくなったし、主催の『NF』なら足が遠のいていたクラブシーンにもまた目を向けたくなった。
同じような遊びを、環境や状況、地域性は違うとはいえしてきた同世代として、
彼らの、山口一郎氏の考え方に一票を投じたい気持ちで楽曲を聴いている。
同時に、山口一郎氏が「ああ、天才なんだな。」とも思っており、
天才ゆえの苦悩が楽曲に現れたりしているところも人間味があって凄く良い。
しみじみ聴くうちに、またライヴ会場に足を運ぼうと考え始めた。
チケットを取りづらいけれど、これほど心を持っていってくれたのはありがたいことだ。
また新しいものを次々見せてくれそうなサカナクションに期待せざるをえない。