映画雑記:今更ながら、『時計じかけのオレンジ』
今回の話題は、今更ですが『時計じかけのオレンジ』です。
ストーリーについてはすでにご存知の方が殆どかと思うので、
私の感想を書こうと思う。
キューブリックは大好き、でも「2001年宇宙の旅」が大好きすぎて、
そのイメージが脳裏に焼き付きすぎたのと、
”暴力的表現”が少々苦手であった私は少し避けていた映画であった。
それが何故、観たくなったのか…
と言うと、年々単に免疫がついてきてスプラッターと過激なホラー以外は観られるようになったのと、この映画自体のセンスが気になったから。
性的表現、暴力描写は見る人を選ぶ映画ではあるかと思うが、
過激というのを通り越して、流石キューブリック。
なんだか観ようによってはコミカルにも芸術的にも見えてしまう不思議さ。
特にアレックス一味の不良グループである、”ドルーグ”が
作家の家にまんまと忍び込み、作家の妻を…というシーンなどは
残酷なのに音楽と映像手法のセンスで、私は夢中になって目をキラキラさせてしまうくらいのアートであったと思う。
あと、ドルーグ達のファッション、
ミッドセンチュリーモダンのインテリアデザイン…どこを切り取っても
絵になってしまう。(ミルクバーなんか特にね!LSDの影響が色濃いのかな。)
主人公であるアレックスは15歳設定だが全然15歳に見えない。
もちろん他のドルーグも。
でもアレックス役を、歳相応の少年が演じたらどうだったであろうか。
多分、全く別物の何かになって、あの魅力は出せなかったであろう。
マルコム・マクダウェルはアレックス役を演じたことを相当悔やんでいたようだが、
あの役はマルコムしか出来ない役であったと思う。
”ルドヴィコ治療”を受け、その副作用から自殺まで図り、
回復したかと思われたアレックスが、ラストシーンで以前のアレックスそのものに戻っていたのが、私にとって強烈に後味がよろしい映画であった(ニヤリ)。
あとそして一つ思う所。
ドルーグ達はロシア語のスラングを使って喋る。
ナッドサット言葉と言われるものだ。
そしてこの映画には吹替版がない。
字幕翻訳だけでも相当色々有ったようなので、仕方ない。
吹き替えを作るのは恐らくナッドサットのお陰で不可能なのかもしれない。
何回観ても、英語もロシア語(勿論スラングなんて…)もわからない私は、
台詞に込められた小さい意味など見逃しているはずだ。
もうそんな機会はないだろうが、いつか日本語吹き替え版が出来たら
もっと面白くなるかもしれないな、と思う作品であった。
はぁ、ミルクバーで一杯やりたいね。